29周年に寄せて

競争社会において「すごくいいやつ」というコメントをされる選手はどのような人なのだろうか。


4年前、彼の一つ上で同じく埼玉出身である選手にそのような言葉を聞かされた時から、今に至るまで続いている疑問である。


個性の強い全日本メンバー、それも北京から続いての代表選手が多い中、ここまで生き残ってきたことがひとつの答えだと思ってはいるのだが。
北京以後の暗黒期に新戦力として残っていくためにどれほどの努力と社交性と忍耐力を必要としたか、想像に難くない。

「185cmですが止めました,決めました。ちっちゃいのにすごいね」に甘えなかった結果、なのだろう。*1

我々が滝うぜええとかはいはい男子弱いねとかリーグ開幕まだー?とか言って、全日本に絶望していようが、彼は日の丸を付けてプレーするのが夢だと語ったその言葉を体現し続けるように、自分の特技を生かして、貪欲にレギュラーメンバーに定着している。
そのことを、素直に尊敬する。



この「いいやつ」という言葉を聞いたのは、全日本に限った話でもない。
彼が主将を務めるチームにおいても例外ではないようだ。*2

ここ4年、黒鷲や天皇杯も含めてほぼ全試合スタメン出場しているという事実が示す通り、選手にもスタッフにも絶大な信頼を寄せられている。
全日本に行っている間、とある選手からは彼の重責と負担を心配する声が聞かれたし、合間にチームに帰ってきて練習に加わると、その対応力*3を称賛されていた。

数々のチーム、歴代の主将がそうであったように、人望と実力が兼ね備えられていなければ、チームの柱として機能することは難しい。
…まだ東レは先輩依存の体質から脱却しきっておらず、世代交代が求められている。中堅世代となった彼の活躍次第で、今後の順位は大きく変わるだろう。



周囲を立てるから。
皆が不得意なことができるから。
人一倍練習するから。

「いいやつ」に込められた想いは人それぞれだが、そうした自分の色をコートで、チームで見せることができるからこそ、今の位置があり、多くの観客は魅せられるのだろう。
今年も、赤い18と青い5がコートで躍動することを願う。


誕生日、おめでとうございます。

*1:勿論今では、アタッカーの低身長化が進んでいるのでそんな甘い考えではたちまちメンバーを外れるだろう

*2:ここに「すごい人」という後輩からの評価も加わるのだが、それはまた別の話で

*3:全日本と企業チームの戦術は全く異なっている場合も多く、少ない日数でそれに対応することはかなり難しいようだ