2012バレーボールミーティング@三島

先日、三島で開催されたバレーボールミーティングに参加してきた。

一般で観戦経験も浅い私が足を踏み入れてもいいものか逡巡したが…気が付いたらメールを送っていたのだから仕方ない(笑)


勢い余り過ぎて、開場時刻よりもかなり前に三島着。
受付で名簿をさらっとチェックしながら、そこそこ良い席に。
…いやー、豪華なメンバーですねこれ。

配布物の三島の袋(観光会社の協力があったらしい)には三島周辺観光地のパンフが沢山、そして今回のテキストとポカリスエットが入っていた。
こういった細やかな配慮や各方面の協賛が感じられるのは嬉しい。

三島駅から会場まで地元高校によるバスも出ていたし。

一応、これからその内容をまとめるつもりなのだが、恐らく内容は午前寄りになるかと思われる^^;
オンコートレクチャーはメモ取っていなかったのが悔やまれる…。

午前・第1部でファースト・テンポの概念に迫り、第2部でセッターとトスに求められるものが呈示された。
更に午後は、午前の内容を裏付けるように、体育館で実際の動作を見ながら東レの選手と高校生とでオンコートレクチャーを行う…という構成となっていた。

講師の渡辺さんも手川さんも、わかりやすく、噛み砕いた言葉ではっきり話して下さっていたので、大学の退屈な講義で経験したような壁を感じることはなかった。
講師側と生徒側に大きな知識差があると、どうしてもこの壁を感じることがあるのだが…
この辺りは聴講していて嬉しかったところ。


ファーストとセカンド

そもそもファーストテンポとは何かというところから。
白ペデに記載がある定義を引くと、

ファースト・テンポ→アタッカーが先に助走動作を行い、それにセット軌道を合わせることで打たせるアタック

セカンド・テンポ→セット軌道に合わせてアタッカーが助走することで繰り出すアタック

ここは赤ペデから大きく改訂された部分。
昨年の全日では声高に「はやさ」が求められ、0.6や0.7といった秒数が強調されていたけれど、あれはファーストとセカンドを分ける要素じゃないよ、と。

私も思いっきり誤解していた。
あのメディアの取り上げ方だと、ファースト・テンポといえば米山さんになってしまうわけで、さすがにそれはないだろうと思っていたけれど。


大事なのは時間の長さではなく、


・アタッカーの踏切動作のタイミング「セットアップの瞬間」

・コンセプト「アタッカーが先に助走し、それにセッターが合わせる」(あくまでアタッカー主導)


歴史の勉強

1960年代:個人技同士で勝負。アタッカー1人VSブロッカー1人。コミットブロック。ブロック側優位。ソ連

1970年代:セッター起点コンビバレー。アタッカー4〜5人VSブロッカー3人。時間差(テンポ差)。数的優位でアタッカー優位。日本。

1980年代:アタッカー1人VSブロッカー3人。リードブロック。ブロック側優位。アメリカ。

1990年代〜:位置差(スロット差)。アタッカー優位。

と、バレーの戦術はアタッカーとブロッカーが切磋琢磨して進化してきたんだよ、というお話。
どっちかが優位になればそれを何とかして克服しようと新たなものが生まれるのは自然なことなのだろうが、縦の流れを知らなかった人間からしたらそれだけで目からうろこ。

今はそろそろブロッカー優位の新しい戦術が出てきつつある…かも。とのこと。乞うご期待。


リードブロック対抗策

セッターのセットアップにブロッカーが反応、横移動、ジャンプ+空中姿勢といったブロック反応時間を経てブロックが完成するのがリードブロック。
これに対して、今「セカンド・テンポ」と言われている攻撃では、アタッカーはセットアップを見てから助走開始、踏切、ボールヒットに至る。
これではボールヒットのタイミングよりもブロック完成のそれが先に訪れるので、ブロッカーが有利になってしまう、と。

では、逆転の発想として。
アタッカーがセットアップよりも先に助走すればいいじゃない。
セットアップのタイミングを目安に踏切ればいいじゃない。

この考え方がファースト・テンポに繋がってくるらしい。なるほど。

実は「セットアップの瞬間に踏み切るスパイク」という正にこの概念、2002年のFIVBトレンドブックにて「テンポ0」という表現で見つけることができるそう。
…ビックとかファーストテンポとか、昨年くらいから耳にし始めた言葉だと思うのだが、まさか10年も前に出ていたとは。
1960年代から個人技術としては存在していたというのだから驚く。
パワポにあった通り、今注目されていることは確かに違和感だ。


速さへの誤解が生む悲劇

セットアップからボールヒットまでの時間を短縮すれば、ブロッカーが間に合わなくなり、アタックが決まるんじゃない?という誤った解釈のもと、

はやさ追求→助走削るしかない(踏み切ってからボールヒットの時間は変えられない)→全力ジャンプできない→高さが犠牲になる

まさに負のスパイラル。
とある選手など、この弊害をモロに受けた気が(自重します

昨年ばぼちゃんでの宇佐美さんや阿部さんのインタビューを聞いていると、やはり龍神はセッター主導の…セカンド・テンポの考え方で「はやさ」を追求していたように思える。


「はやさ」の主観

アタッカーや見ている人にとって、いくら速くても意味がないよ、と。
大事なのは「ブロッカー」にとっての速さ。

ここで大前提なのは『リードブロックは、セット・アップ後でないと動き出せない』こと。

ここ、うろこポイントだった。
アタッカーが助走を簡略化して高さを殺してセット・アップを見てから踏み切ると、同じくセット・アップを見てから飛んでいるブロッカーとドンピシャですよ、という感じかな。たぶん。

セット・アップの前にアタッカーが助走に入っていれば、ブロッカーはタイミング的に間に合わない上に、高い攻撃が来るので更に止めることが難しくなる、と。

なので、長身選手が速い攻撃ができないというのも嘘で、俊敏性では低身長選手に劣ったとしても、踏み切るタイミングと高さが出れば、ブロッカー的に「速い攻撃」はできるよ、ということに。

この辺りも見た目とメディアに惑わされていたりするかも。
図にされると確かに「当たり前」なことなのだけど、そういうことほど気付くのが難しい。


位置差

上までは、時間差の話がメインだった。
ここからはそれに対して位置差(スロット)…というか、同時多発位置差攻撃(シンクロ)について。

ブロックの成功を阻害する要因として、高さ速さの他にもうひとつ。
「選択反応時間の延長」
要は、アタッカーの選択肢を複数確保して、ブロッカーにいろんな可能性ちらつかせて迷わせて反応遅くさせちゃおう的な。

そして、これにはアタッカーだけではなく、セッターの力が必要になってくる。

キーワードとなるのは、

・オーバートス:セット・アップする瞬間ギリギリまで誰にセットするのかの手がかりを与えにくい。アタッカー皆が助走すれば同時多発位置差攻撃が展開できる。

・インダイレクトデリバリー(放物線上の軌道):アタッカーもボールも最高到達点で漂う。時間的にも空間的(コース)にも幅ができる。

ここをクリアできれば、手羽先な低イックの悲劇は回避できるよ、と。
高い選手は高さを活かしてなんぼだよね。
ここ数年で低身長選手(190cm以下とか)が増えたといえ、それで高さを殺すのは本末転倒だよなあと改めて感じた。
高さと速さを両立できないなんて思わずに、貪欲にどっちも狙っちゃえばいいじゃないと考えてしまうのは素人ゆえかも。(苦笑


セッターとアタッカーに求められる「当たり前」

セッター:アタッカーが、自身の最高到達点付近でボールを確実にヒットできるように、正確にトスをあげる

アタッカーが助走放棄(簡略化)している場合、その分の時間短縮のために、セッターが頑張って速いトス(ダイレクト・デリバリー的なものかな)をあげる必要性があったが…「本来セッターは、攻撃の主導権を握るのではなく、お膳立てをするだけ」という。

…この辺り、セッター主導の傾向が強い東レファンからしたら、結構耳に痛い言葉かも。
まあ近年は、その辺りから徐々に脱却していると思うのだが。


アタッカー:セット・アップよりも前に、全力で跳べるように十分に助走し、セット・アップを目安に踏み切り、自身の最高到達点でボールをヒットする

要約。しっかり助走してあがって来たボールを全力で打て。(ここでハイキューが紹介されていた)

逆にアタッカーはセッターにお膳立てしてもらって、個人技勝負かな。

今季は「当たり前」のプレーがどのくらい見られるのか注目したいところ。


例外

何事にも例外は付き物。
今回でいうと、「しっかり助走しなくても、セット・アップを見てから踏み切っても、自身の持ち味を最大限発揮できる」選手。

東レではデキさんや篠田さんがこれに該当するようで、最早特殊能力。

とりあえず、デキに関しては入団当初の2008年以前は今よりも助走して、ファースト・テンポの攻撃をしていたよ、ということは皆様の呟きや動画から何とか。

いろいろな動画を見て検証しようとしているけれど、条件の違い等でなかなか結論は出せず。(少なくとも私は)
阿部さんと近藤さんによってもかなり違うところがあったりするので…難しい。
一応阿部さんは、「助走を殺さないトスを心がけて、前の方に上げて飛び付かせるように意識している」と、月バレで言及していたりするのだけれど。



ふう。長々取りとめのない文をお読み下さりありがとうございました。
豊富な資料映像がたっぷりで、しかもそれを参加者全員に配布して下さるという配慮がとても嬉しかったです。
欲を言えば…時間はあと1時間は長く欲しかったかなと思います。
最後の巻きモードが勿体なかったです。
講師の方々、この学会の開催に尽力された皆様、本当にどうもありがとうございました。
御挨拶させて頂いた方々、一緒に参加して下さった方にも…本当に感謝でいっぱいです。
楽しく学べた1日でした。


…オンコートレクチャーについても書きたいけど…まとまらない気配濃厚ですすみません…



追記

山田さんに、ほんとに約1年ぶりにお会いできて嬉しかった。
元気そうで安心した。
相変わらず腰の低い方で、お話している時うっかり泣きそうになったのは秘密。